東北の旅9~最上屋旅館

空は灰色ですがどんより重くもありません。このままここにしばらくいると、どこからか薄日でも差してこないかと思うのですが、やはり昨日と違って月山も鳥海山も見えないのです。
まあ、ああいったものは常に見えているものでないから、かえって見えたときの感動も大きいのでしょうね。でも、ほんとにあれは現実だったのかと思うくらい、月山はもちろん鳥海の姿はすっかり消えていました。

酒田の港 日和山公園より望む
b0032167_4173669.jpg


このようにすっかり見えなくなってしまうと、かえってほっと落ち着いた気分になるものです。

思えば昨夕電車に乗ったとき、海との境はぼんやり靄のかかったようで、沈みかけた日は薄いオレンジ色が縦横に延びたようで、そしてあっという間に暗くなったのでした。
とっくにダルマのような夕日はあきらめて山ばかりを眺めていた私でしたが、鳥海と空がどんどん一体になっていくのを見ていると、いつまでもそれが見えているように錯覚して、暗くなってからは電車のガラス窓の汚れさえ山の稜線に見えたりしていました。

今日になって、私は自分がいかに鳥海に囚われていたかに気づいたのです。


さて、私の泊まった最上屋旅館ですが、こちら建築が大正期の木造3階建て。まるで文化財のようでしたよ。
建物はもちろん、置かれている家具、美術骨董品、それと襖などの建具類、欄間の装飾細工など、最近ではめったに見られないものばかりでした。
ほんと、新建材のちゃちい住宅なんかに住んでいると、その重厚さはとても素晴らしく貴重な物に思えました。

お部屋は掃除が行き届き、塵ひとつない部屋の空気ってこんななんだなー、と思ってしまったぐらいです。ほんと、お部屋に一歩入ったとたん清浄な感じがしたのです。

写真の腕が悪いのでえらい煤けて写っております。最上屋さんには申し訳ありません。
重厚な襖なのになぜか軽やかに開く。するとまずこの応接セットの置かれた縁側に入るのです。
b0032167_4225671.jpg


b0032167_2442326.jpg

そして部屋は畳が本間サイズなのかかなり広かったです。
最初、少しでも安価なところをと6畳間を予約していたのですが、「空いているときはこちらをどうぞ」とのご好意でここに移して頂いたのでした。

写真には写ってませんが、この椅子の後ろ側、めだたない所に棚がありまして、さりげなく画集が置かれていたんです。何かな?と思って手に取ると上村松園さんの画集でした。

床の間に上村松園の絵を模したものが掛けられていました。
b0032167_321654.jpg


私はこの炬燵に入って、ゆっくりと画集のページをめくったのです。
b0032167_255375.jpg

炬燵の後ろにある茶色い扉のようなものは入り口ではありません。たしか、洋服掛けになってたと思います。

伊達政宗の遺訓です。この年齢になって、やっとこういったものが心に伝わってくるように思います。
b0032167_316093.jpg


こちらは東照宮遺訓。徳川家康の言葉だそうですね?史実は曖昧。
旅館のおじさんの、お母様だったかお婆様だったかが書かれたものだそうです。上は行書、下は楷書で書かれています。
b0032167_3184063.jpg

「人の一生は重き荷を負うて遠き道を行くが如し 急ぐべからず 不自由を常と思へば不足なし
心に起らば困窮したる時を思ひ出すべし 堪忍は無事長久の基 怒は敵と思へ
勝つことばかり知りて負うることを知らざれば害 その身にいたる己を責めて人をせむるな
及ばざるは過ぎたるよりまされり」
と書かれています。楷書で書いてくださってたおかげで私でも読むことができました。


快適なお部屋で糊のパリッと効いた浴衣に着替え、階下へ降りていったところ、おじさんが
「館内をご案内しましょう」
と言ってくれて、あちこちに階段のある不思議な?忍者屋敷のような?館内を拝見、いや、探検しに行きました。
いろんなお部屋がありました。部屋ごとに飾ってあるものに特徴がありました。いっぱいあったので忘れましたが。

おじさんも、
「お部屋は何室あるのですか」と聞いたところ
「ええーーーと、いくつあったかな」と。

そして、3階に小部屋がいくつかありまして、これがまた素敵なお部屋だったんです。
最初はあまりに狭いため客室として使用していなかったそうなんですが、開放したとたんに人気が出たそうです。それもそのはず、まるで数日こもって執筆でもしたくなるような、そんなしっとり落ち着いた、ここが自分の世界~みたいな部屋なんです。私も、今度はここに泊まってみようかな~なんて思いました。さっきも書いたけどここの欄間の細工が素敵だった。

次に、
「これはプライベートな所なんですが、雛飾りをはじめて出したので見て下さい」

と、プライベートルームに案内してくださいました。
そこにはちょっとめずらしいお雛様が飾られていたのですよ。

これはHPから引用させて頂きますが、
「三人官女の他に三番叟と犬付女人が、五人囃子の他に八人囃子が含まれているのが特徴です。 また屏風の代わりに杉戸絵の襖(6枚)と格天井付きです。本家で維持管理出来なくなり譲り受けましたが、何時頃の物か定かではありません」
とのことです。どなたかご存知の方がいらっしゃったら情報提供お願いします。


さてお風呂。
重いリュックを背負って歩き回ったせいか、肩の真ん中辺りが赤く傷になっておりました。気のせいか肩の真ん中あたりの骨が隆起してきたようにも思えて、それがたんなる腫れなのか判らずちょっとびっくりしたのですが、大きくて深い浴槽のたっぷりのお湯に浸かっているとずいぶん楽になってきて、気持ち良く眠りにつくことができました。

ここで寝た。翌朝撮ったので乱れてます、、、。
b0032167_4114558.jpg

枕がちょっと高かったので、座布団を拝借しました。

(つづく~肘折の谷)
[PR]

by hiruu | 2010-04-16 04:22 | 日記 | Comments(6)

Commented by kasama at 2010-04-21 22:27 x
ノスタルジックな感じがする落ち着いた部屋ですね。
こんなところに泊まれるなんて、素敵だと思います(^_^)
Commented by hiruu at 2010-04-22 00:37
kasamaさん。軽量化された今の住宅と違い、やはり質感を感じましたねー。こういうの、私たちが子供のころはまだまだ残っていたと思うのですが、今の子供たちが大人になる頃はどうだろう。。。
Commented by へー at 2010-04-22 13:25 x
古い旅館って怖くないですか??
東北だし!!
私は東京より北に行ったことが無いです。
Commented by mamicha2 at 2010-04-23 09:45
お雛様、HPの方拝見しました。これはきっと最初からこのような
セットのものではないのでしょうね。
台座が別々なもののようなので、最低でも2種類のお雛様を
組み合わせたのではないでしょうか・・・・
それにしても八人囃子ってのは珍しいですよね。
Commented by hiruu at 2010-04-24 01:40
へーちゃん。ううん、大丈夫だった。子供のときはなんであんなに怖かったんだろうね。
この年になると、、、現実を知り尽くしたか?それとも目が遠くなったせいか?
Commented by hiruu at 2010-04-24 01:43
mamichaさん。わざわざ見てくださったんですね、ありがとうございます(^^)
そうなんですか、台座が別々とは。旅館のおじさんきづいてはるかな?
古いものらしいので、後から補充してるかもしれませんねぇ。