東北の旅8~酒田

「これ持って行ったらいい、貸してあげるから」

最上屋旅館の小父さんはそう言ってくれたのですが、幸い風もなくたいした雨でもなさそうでした。今日は一日こんなお天気だそうで、なので羽黒山まで行こうかなんてことも考えていましたが、そこまで足を延ばすのはやめることにして、酒田の街を歩いてみることにしました。

私はせっかく小父さんが出してくれた大ぶりの傘を断って、神戸からわざわざ持ってきた軽い折りたたみ傘を差し、最上屋さんの引き戸を開けました。ガラガラガラ

最上屋旅館
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手荷物はビニールの小袋ひとつ。中にはハンカチとボールペン、カメラ、そして出掛けに観光マップを印刷しておいたので、戻れなくなって困らないようにと旅館の場所に丸印を付けたものを入れておきました。

もともと観光名所のような所に行くのは好きでなく、それといってどこへ行こうという当てもないのです。
これは雨だから、というのではないのですが、一人旅の寂しさは目的がなくぶらぶらするときに感じてくるもので、歩いているうちにだんだん陰静(←造語)になってくる。そんな気分を私は結構好きだったりするのです。

昨日はあんなことがあったなぁとか、物思いにふけってほげーとしたり、ニヤニヤしたり。そして自分独りなのに気づいて陰気になるのですが、それでも決して鬱にはならない。

これは、旅の行程の中で必ず人との出会いやふれあいがあるからで、これがまた翌日のほげーに繋がっていく。こういうのの繰り返しが好きで、私は一人旅をするのです。

で、さきほどのほげーとニヤニヤの内容ですが、昨夜は酒田駅前発のバスがいつまで待っても来なくて、近くにいたお兄ちゃんに聞いたらお兄ちゃんも酒田に来るのは初めてでわからなくて、しばらくして場所を変えてから、また近くにいたお兄ちゃんに聞いたら、そのお兄ちゃんも酒田に来るのは初めてだという。それで、どうも同じお兄ちゃんだったらしいと気づいて情けなく思ったことや、バスに乗るのをやめてタクシーに乗って旅館まで行くことにしたのが、タクシーの運ちゃんがバリバリの庄内弁で、それまでどこへいってもみんな標準語でしゃべってくるので少しがっかりしていたのが急に嬉しくなって、数百円も払ったけどタクシー乗ってよかったなぁとニヤニヤしたり。

他には、旅館の晩御飯をよっぽど楽しみにしていたのにちょっとした手違いがあってご飯にありつけなかったことや、小父さんが教えてくれた店屋で定食を食べに行ったら、味噌汁に入っていたアオサが分厚くて美味かったこととか、小父さんがお詫びに「朝市へ連れて行ってあげる」と言ってくれているのに「朝は7時に起こしてくれ」なんて言っちゃって、それで小父さん気を使ってくれて小父さん手料理の朝ごはん食べさせてもらったことや、それがめちゃくちゃご馳走で美味しかったこと等等等。

妄想は尽きず。

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「昼前には戻ります」と小父さんに言って出てきたので、旅館周辺で歩いて行けそうな所を周ってみようと思いました。観光名所は好きでないなんて言いながら、それでも観光マップを持っているので有名な山居倉庫ぐらいは行っておこうと、港方面へ足を向けることにしました。途中で鐙屋(あぶみや)といって廻船問屋の建物があって、先に入ってみることにしました。

鐙屋さんは、日本海海運に多大な貢献をされた問屋さんであります。井原西鶴の『日本永代蔵』にも鐙屋さんの名前が出ています。

庄内雛街道という祭りが近日中に開催されることもあって、鶴岡も酒田も主要観光地は‘雛人形’なのですが、ここ鐙屋さんでも雛人形が飾られていました。

入ってすぐ、学芸員の方でしょうか、知性あふれる綺麗な奥様に「お雛さんを折りませんか」と折り紙をすすめられ、最初、眼鏡をかけたりはずしたりしてお内裏様の折り方を教えてもらってたのですが、

「関西の方ですよね」と言われ「わかりますか」のやりとりから女同士のおしゃべりが続きまして、、、。

小説の影響でこちらに来たといえば、「月山は一度読んでみようと思いながらまだ読んでない」とか、「お互いゆっくり本を読む時間がなかなかね」といえば「最近の作家の本もちっとも知らなくて、何かおもしろいのありませんか」と。
私も最近の作家は知らないけども、三浦しをんさんのがおもしろく読めたとか、‘おしん’で覚えたら忘れないとか、そんなおしゃべりがどんどん発展して、そんでもって即身仏さん見てきたといったら「近くの海向寺さんにも即身仏ありますよ」とか、海向寺には精神科医の香山りかさんがよく来てるだの、香山さんは即身仏さんと長い間お話をされるそうだとか、よくいらっしゃってるとか、それにあの人はプロレスファンでもあるとか。
「精神科医がプロレス好きで即身仏とお話ですか、なんかよくわかりませんね」と大笑い。


1時間ぐらい滞在したでしょうか。。。おもわぬ時間を費やしてしまいました。

こちらでは観光名所はもちろんお寺もそうであったように、どこへ行っても丁寧な案内をしてもらえます。関西の京都や奈良の‘勝手に見てや’の印象と違い、まったく、人の温かみを感じてしまうのです。


「ここに酒田の町に鐙屋といへる大問屋住けるが・・・・・台所の有様、目を覚ましける」井原西鶴『日本永代蔵』

その台所はこんなんだった。
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私にもごちそうしてください。


お雛さん。
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つづいて山居倉庫。
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↓こういうのは私しか撮らんと思う。濡れ石で滑りそうなところを下りた。
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有名な山居倉庫の欅。
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この木が気に入った。
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(つづく~酒田 最上屋旅館)
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by hiruu | 2010-04-16 03:39 | 日記