東北の旅6~鳥海山と鶴岡の出来事

「こんな日はひと冬に2度あるかないかですよ。あなたよかったね、ええ日に来たね。ん、これだと鳥海が見える。」

「ほんと、私、恵まれてますね。こちらは物凄く寒いと思って、こんな防寒服着て来たのに。おまけに長靴まで持ってきてるんですよ。」

鶴岡へ向かうバスの中で、私は初めて出会った人達とおしゃべりに高じていました。そういえば、こちらに来るバスでもこの方と同じような年恰好の老婦人と話しをしたのです。
この地は誰もが好意的で、いつでも誰かが私のことを見ていてくれるような、何か安心感のようなものがありました。

「ほんとに、2週間前だと全然違ったよね。」

「ええ、あのときはねぇ。もう吹いて、吹いて。」

老婦人がアンケート調査員の男の人と話し出しました。この日はたまたま、乗客へのアンケート調査と称して、バス会社の人が乗り込んでいたのです。私はこちらに来るときのバスでも同じような質問をされて、また同じことをここでも答えていたのですが、そのときに神戸から来たというのが他の乗客達の耳に触れたのでしょうか。好意的に感じるのはそのせいかと、そんなふうにも思ってぼんやり窓外を見ていたときでした。


「ああっ、あれが」



「そうです、あれね」

「ほぉ、鳥海が見えるな」


晴天ながらも薄っすら霞んだ遠くに細い稜線が引かれていました。それは正確な線対称でした。流麗といえばもちろんそうなのですが、そんな言葉ではとうてい言い尽くせない、どうしてあんなところにあんなものが、と狐につままれたような、あれ?といった感じなんです。



「これから、どちらへ行くの」

アンケート調査の人が背後から話しかけてきたのにはっとして、私はこれからの行程を説明しました。

私が山形に来た第2の目的は羽越本線に乗ることでした。海側から月山を見ること、そしてうまくいけば日本海に沈む夕日を見れるかと考えていたのです。すでに七五三掛村から月山を見て、注連寺にも行けたので、ここまでは予定通り順調な行程でした。
鶴岡発の電車までずいぶん時間があったので、これといった目的場所はなかったのですが、到道館、うまくいけば到道博物館まで散策してみてもいいなと考えていました。


「黒いマリア像を見に行ったらいい。あれはめづらしいもんだから。」

「黒い、マリア像」

まだ行くとも言わぬ私に、さっさと用紙を裏返して地図を描き出してくれたので、私は席を立ってその人の前の席に移動したのですが、

「ここに赤い橋があるから、そしてこっちに消防署があって、こっちじゃなくてここ、右側にある。もうひと筋歩いて左に曲がれば到道館。帰りは、市役所の前から駅へ行くバスが出てるから。」

さらに、

「博物館はお金がかかるよ。教会は無料だからね。」

とおっしゃるのです。

久しぶりに旅に出ることができた私にとって、数百円ぐらいの拝観料などどうでもよかったのです。もしかすると、私がよっぽど貧乏に見えたのかもしれません。

予定ではこのまま鶴岡駅まで出て、そこから到道館行きのバスに乗り換えるつもりでいましたが、
「ここで下りて、ここで下りて」とおっしゃるので、結局言われるままに、何というバス停かちっとも判らぬ所で下車し、描いてもらった地図を頼りに歩き出しました。


教会によくあるように、鶴岡カトリック教会は幼稚園といっしょになっていました。もう午後も遅くになっていたので園児はいないものの、ご婦人方の集団が来ていました。こんな季節に、どこへ行っても観光客の姿など見かけなかったのですが、さすがに有名なところなのでしょう。

黒いマリアは左側の副祭壇に、金色の衣を纏った姿で真っ直ぐに顔を上げて立っていました。
それまで私は寺の暗いところで即身仏を見ていました(大日坊は少し明るかったですが)。
そしてマリアはとても明るい場所で、おまけに白い壁を背景にして立っていたので黒い顔がはっきり見えました。

即身仏は人であり、マリアは像であって、もちろん比較すべきでないかもしれませんが、苦行を極めたそれとマリアの優しい表情は対照的で、日本と西洋の対象の捉え方というか、捉える姿勢の違いというか、宗教観の違いというかなんというか、また少し勉強してみなければと思ったのです。


(~風はここまで。きどって書くのに疲れたので戻します。)



到道館は、庄内藩主酒井忠徳公が開いた藩校。だそうです。

敷地内には誰もいませんでした。あまり長居をするつもりもなかったので、少し庭園をうろうろして帰ろうと考えていましたが、いつの間にここに来たのでしょうか、若い男が話しかけてきました。


「梅の蕾が膨らんでいますね。春が来たなと、思いませんか」


正直ひきました。何か目的がありそうなその目つきに、さらに2歩ぐらい引いたのですが、自分がおばはんだったことを思い出し、走って逃げるようなことはしませんでした。

テレビ局の取材でした。山形の朝日系のなんやらとか。たしかに、赤い梅の蕾が膨らんでいました。
そして言われるままにインタビューに答えることになったのですが、梅の木の所に立って、さきほどの「春が来ましたね」みたいなことを言って欲しいということで、素直に応じたのです。それでも、

「やらせじゃないですか」とつっこみを入れることは忘れず、
「これ、映るんですか」

「はい、今日の夕方のニュースで、放映します」


旅館のチェックインが19時頃の予定だったので、そのニュースは見れないなと思いながら、ちょうど若い女性グループが来たのでそちらに振って、

「私はこれで失礼しますけど、よろしいですね」

そう言ったときすでに、その男の人は若い女性グループに話しかけていました。少しほっとしながらも、なんやねん、と思ったことを正直に書いておきます。


後日、家に帰ってから何となく気になって、山形○○○を検索してみたら、バックナンバーに赤い梅の蕾が動画のイメージになっているのがあって、もしや?と思ったらそれだった。ああ、汚いおばはんが。
あのとき後で入ってきた若い女性グループは、と思ったらほんのちびっとで、ほとんどが私の顔。それもすっぴんで、寝不足の腫れぼったい顔が、かなり大きく映ってて、それがニタニタしながらしゃべってる。ぐぇぇ~~~。


この日、鶴岡市では最高気温が平年を16.4度上回る20.9度を記録したそうで、それでニュースヘッドラインとなったわけです。
今思えば「その上着、暑くないですか?」とか言われながら、荷物になるので脱ぐのもめんどうと着ていたのが、どうもニュースの内容に相応しくなかったらしく、それで肩から上ばかりが映し出されていたのです。
バックナンバーがなかなか消えなかったのが、やっと消えたので書きました。


写真は到道館
b0032167_23473435.jpg


鳥海山は、写真を撮ることすら忘れるほどで、ありません。。。


(つづく ~羽越本線小砂川駅まで)
[PR]

by hiruu | 2010-03-30 15:47 | 日記 | Comments(6)

Commented by kasama at 2010-03-31 00:14 x
鳥海山って、どんな風景なのでしょう(・・*)。。oO(想像中)
きっと、鮮やかな雪景色が広がり、美しい稜線がくっきりと現れていたのでしょうね。
Commented by hiruu at 2010-04-01 02:02
kasamaさん。書きかけなのをアップしていて、内容がわかりにくくてすみませんでした。といって、推敲しなおしましたが、あまりかわってないようです(^^;)
鳥海山は、写真で見たとしても実際見たときの印象とずいぶん違うと思います。一度見たら捕われるというか、あこがれるというか、惚れるというか。天候の具合で常に見えている山ではないので、余計にそんなふうに感じるのかもしれませんね(^^)
Commented by mamicha2 at 2010-04-07 23:19
いきなりのテレビ取材、なんかその状況が目に浮かぶようで
ニヤニヤしながら読み進めておりました。

鳥海山、写真を撮るのも忘れちゃう程???
うーん、こりゃまた行きたい場所が増えちゃったな~
それにしても、本当にお天気に恵まれて良かったですね。
寒くて縮こまっているのと、暖かいのとでは、行動範囲が
格段に違ってきちゃうもの。
つづきも、楽しみしてますよ~
Commented by shojie at 2010-04-08 01:26 x
おおっ・・やっと馬場町まで来たケェ。
オラは みどり町 に住んでおった。
それはともかく、おっせぇ~な、はようしてケロずぅ。
先急げ!
Commented by hiruu at 2010-04-09 04:09
mamichaさん。えへへ、テレビ映りより実物のほうがええよ、と思うことにしておりますが、やはり現実を突きつけられたようで、あんまし見たくなかったです(^^;)

鳥海の写真、結局一枚も撮らなかったんですよ。翌日は雨で見えなかったこともありますが、どこまでも流麗なあの姿は写真におさめるべきでないと、撮らずにおわって良かったと、今そんなふうに思ってます。
まだまだ続きますよ~。もう旅行から1ヶ月半も経ってるのにね(^^;)
Commented by hiruu at 2010-04-09 04:12
翔爺。あそこ馬場町っていうんやねぇ。そうか、爺の住んでたところの隣やってんね。
おっせぇ~な、って(笑)、 気長にまってぇ~な(^0^)